2015年05月19日

「パレードへようこそ」で見る80年代英国の一面

 どうも久々に映画なぞを見て来た狐です。
 以前に映画を観たのは、はて何時だったか、と思えるほどのものではありますが今回観てきましたのは「パレードへようこそ」( http://www.cetera.co.jp/pride/ )。
 2014年に英国にて制作された映画であり、原題は「PRIDE」。そう、ふと察せられる人もいるかとは思いますが、ゲイやレズと言った同性愛をテーマの一つとしている映画でもあります。

 とは言え、それだけならとても観には行かないでしょう。何故わざわざ観たのか?となれば、それはこの映画がサッチャー政権下での英国を描写していたから、となり、更に加えるならばゲイやレズ、いわゆるLGBTと称される近年になってその存在が大きく、広く知られ、また認識されるようになった「若い」流れにいる人々と、炭鉱労働者、即ち長らくに渡って社会や経済を支える根底足る資源「石炭」を掘り出すのに従事してきた「古い」流れにいる人々のつながりを描いた、その点に非常に興味深かったから、となります。
 かつ、それが実話をもとにしたものである、そこが特にポイントとなったと出来るでしょう。全く違うカルチャーの中にある彼らがどうして結びついたのか、これは是非とも観なければ、となった訳です。ちなみに知ったきっかけはしばらく前の東京新聞夕刊であったかと思います、通勤電車の中で何気なく読んだ記事であったものでした。

 舞台は1984年、日本はバブルに向かって「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とすら評されていた絶頂期。対して、西の島国たるかつて世界を制覇した英国は「英国病」と称される長期的な停滞の中にありました。
 そこに現れたサッチャー保守党政権の下、後にサッチャリズムと呼ばれる民営化や政府の関与(規制)の縮小を基軸とした新自由主義政策の下で揺れ動いていたものでした。
 その象徴的な光景として取り上げられるのが、国有化されていた諸産業の労働組合により展開されていたストライキでしょう。
 特に有名なのが国有自動車会社ブリティッシュ・レイランドの組合によるものと、全英の炭鉱労働者組合によるものですが、「パレードへようこそ」で取り上げられているのは前述した通り、その後者であって、その姿は第二次世界大戦後のカルチャーのひとつとも言えるLGBTと比べると全く対照的であり、およそ、ただ、そのままではとても結びつくとは思えない限りでしょう。
 しかし、この2つの存在はLGBTのある若者が「両者ともサッチャー政権の政策(LGBTに対しては英国の伝統的な価値観の維持、炭鉱労働者に対しては合理化を主題とした新自由主義政策)によって圧迫されている!」と気付いた事、それがきっかけとなって、そしてふとした勘違いがきっかけとなって一気に結びつきます。

 とは言え、それはその時点ではそれぞれの全体の合意に基づいたものではなく、半ば勢いに近いものでありましたが、一度動き出したが故に危うさを秘めつつも話はどんどん広がっていきます。
 それ故に引き起こされた様々な人間模様の交錯や対立、更に共に対峙している政権側の政策の進行、何より社会からの視線。それ等によるつながりの動揺―即ち秘められていた危うさの露呈―と流れとしてはある意味、矢張り、と言えてしまえますがそれらのシーンが一つ一つ、やや断片的でありながらつながりを持ってテンポ良く描かれているのには何とも惹き込まれてしまう事、頻りであったとしか言えません。
 そしてそこから生まれた変化は「バタフライ効果」ここにあり、と言えてしまえる好例ですらあるでしょう。

 同時に感じたのは圧倒的に多数、と感じている事が実はそうではないのかも知れない、との事でしょう。また当然と言えば当然なのですが、センセーショナルに描かれる、報じられる内容を人間は信じやすく、更に信じるだけならともかくそれを鵜呑みにして周囲に広めようとしてしまう。
 その模様は昨今の日本でも良く見られる現象だけに、取り上げられるテーマこそ違えど、遠くの出来事を見ている心地ではとてもいられない。まるで我が事の様にも捉えられてしまったものです。
 そうした展開以外でも作中に現れる様々な小道具や建物、衣装などは当時の、80年代の空気を何とも伝えていた点も見どころ。例えば、移動している途中では連絡が取れない、これはあるワンシーンとなりますが、それすら今や「有り得ない」経験とすら一般にはなってるでしょう。ふと新鮮とすら見えてしまえます。
 対して21世紀となっても英国の街並みは、サッチャー・メージャー保守党政権後、「クール・ブリタニア」「第三の道」を掲げて、一定の復活を推し進めたブレア労働党政権、と様々な流れを経た後でもあまり変わっていない事にも、かつて旅した時の記憶を被せては気付いてしまったものでした。

 そんな具合で色々と盛り沢山な「パレードへようこそ」。テーマがテーマなだけに明確な同性愛的な表現が時折ありますので、そうした点が苦手な人は厳しいかもしれませんが、サッチャー政権下での英国の世相と文化に触れるには大変良い作品であると思えてなりません。
posted by 冬風 狐 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時事・民俗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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